高圧ガスを圧縮するシリンダー部品で常時可動しているのが、ガスをシリンダー内部に吸い込んだり外部に吐き出したりする吸入弁/吐出弁と、シリンダー内のガスを大気側に漏らさないためのシールパッキン(ロッドパッキン)です。この二種類の部品は高温、高圧のガスに常に晒され可動しているので消耗度が激しく、一般にメーカーの保証期間は一年間連続稼働(8800時間)が要求されます。 

過酷な条件で常時晒されるこれら部品のトラブルはプラントの操業に大きく影響します。トラブル発生時の機械の停止から解放、原因の調査、対策、再組み付け等 時間とコストがかかります。ユーザー様だけで処置出来無い場合もあり、その場合は機械メーカー様は迅速な対応が要求されます。
吸入/吐出弁のトラブルはシールのロッドパッキンのトラブルより解決に時間を要します。バルブ(吸入/吐出弁)内の構成部品は主にバルブプレート、スプリング、緩衝材(バッキングプレート、スプリングボタン等)等あり、トラブル時はほぼ全ての部品に損傷が発生しているので原因が把握しずらいのです。

バルブプレートはガス通過部を起点にした亀裂→割れ/欠け、プレート外側からも割れ/欠けが発生します。スプリングはコイルの断線、コイル全体の変形、中には欠けたスプリングが下流側(配管)に流されたと思えるほどバルブ内に見つからない場合もあります。

原因は色々あります。ユーザー様的にはメーカー様の指定する材料を組付け損なったとか仕様データー通りの圧力/温度で運転しなかった等の場合があります。設計的にはスプリングやバルブプレート材料の取扱いガスとの相性の問題、材料の強度不足、構造的あるいは寸法的な問題等、その一つ一つをチェックしなければなりません。

取扱いガスに対する材料の相性の問題では例えば硫化物や塩化物を含むガスへの材料の選定には細心の注意が必要です。材料の強度、構造的かつ寸法的問題は正に設計の基本的事項でありミスなどあってはなりません。

往復動圧縮機の宿命的問題にガス圧力の脈動現象があります。これは周期性を伴ったピストンの繰り返し圧縮運動により発生する現象で、周期性を伴うことにより時に接ガス部品の共振の問題が発生します。
シリンダー内に設定されるバルブまわりの空間容積、プレート及びスプリングの持つ材料的かつ構造的性質等から圧縮機の回転周波数で動作しているプレートやスプリングがひとたび共振し回転周波数の何倍もの高さで振動したり大きく振れたりして過大な応力が発生します。これにより材料に生じる亀裂、破断等により機械は停止を余儀なくされます。
特にスプリングはコイル式にしてもプレート式にしてもある一定のばね定数を持った伸縮式の部品なので共振の影響をもろに受けます。ひとたびこの問題に遭遇すると解決が厄介です。

スプリング設計では共振領域を外すよう検討しますがスプリング材の材料的、機能的かつコスト的側面から理想通りの形状に至りません。
現場で急にこのようなトラブルが発生し時間的制約で急きょ対策しなければならなくなった時に取りうる対策として
① スプリングのばね定数を強くする
  ばね定数を強くし共振周波数を上げることにより使用回転数から共振点を遠ざけます。
② スプリングリフトを下げる
  スプリングの伸縮幅を狭くし共振してもあまり大きく振れないようにします。
➂ バルブガイドを硬くする
  スプリングを納めるバルブガイドの表面を硬く表面処理することにより共振時のスプリングの跳ね上がりを抑制します。

等があります。