ピストンの材質には何種類か有り、鋳鉄、炭素鋼、アルミ合金等ですがアルミ合金は表面の硬度を上げるため陽極処理を施しているように急速に流れるガス中の異物への対策、またピストンリング溝内で摺動するリングと溝間の衝突に備えるための処置等がなされるようにピストン表面は過酷な環境に晒されます。
表面硬度が比較的高い鋳鉄も長年使用しているとピストンリングがはまるリング溝の側面にへたりが発生します。これはピストンリングとの衝突で生じたものですが、リングが樹脂の場合でも硬度の高いピストン側がへたります。

リングとリング溝間はリングの膨張代分のすきまがあり往復動の切り返し時、リングはリング溝側面に高速で衝突します。溝に対して高速状態の樹脂リングはピストンに比較して少ない質量ですが速度が大きいのでリングが保持するエネルギーが非常に高く溝に衝突する時ピストン側が負けてしまうということになります。
ピストン溝がへたると補修としてピストンが分割型の場合溝部ピースを一式取り替える場合もありますが、一体型の場合はへたった溝部を鉄ークロムメッキで肉盛補修するということになります。
この場合、肉盛り代分溝回りを削ることになりますがその時は溝部回り全体を削らなければなりません。側面にだけの肉盛り等は将来肉盛り部の剝離につながります。