プラント操業において生産計画の変更があった場合、特に生産量の増量により既存の圧縮機流量を変更したい時いくつかの方法が有ります。流量UPのファクターは ①ピストン径を上げる ②ストロークを上げる ③クリアランスボリュームを下げる ④前後の圧力比(圧縮比)を下げる ⑤回転数を上げるという方法が有ります(減量する場合は逆になります)。
このうち ②ストロークを上げるにはシリンダー本体やクランクシャフトの新造等大掛かりな改造が必要です。また ⑤回転数の変更も駆動機の取替えあるいは増速機の追加など基礎を含めた大変な工事になるので滅多に行われません。通常はわずかな変更になりますが、④圧力の変更あるいは ①又は ③の既存の機械部品の改造で流量の増量/減量を図ります。
ガス圧力の変更においてはその変更がシリンダーの設計圧力に及ぶ場合、圧力が1MPa以上であると高圧ガス保安法に抵触するので所属官庁への書類変更手続き等面倒な業務が発生するので気を付けなければなりません。部品を改造する場合はピストン、シリンダーライナー、シリンダーバルブがその対象になります。
部品改造のうちピストン径を上げるのが手っ取り早いですが、この場合シリンダーライナー内径も上げなければなりません。ライナー外径は一定ですから内径を上げるとライナー厚みが下がります。ライナーの強度の確認が必要です。さらにピストン径を上げたことによるピストン重量の増加はピストンの往復動慣性力の増加につながるので軸受関連の荷重チェックも必要です。
ピストン径の変更が不可能な場合、クリアランスボリュームの変更を図るべく、取扱いガスに触れている部品のどの個所を肉付けするか検討しなければなりません。シリンダーの設計は無駄のない設計をしていますからあまり選択肢は無いのですが、径の大きなシリンダーの場合、数も多いシリンダーバルブは比較的効果が有ります。つまり、吸入弁、吐出弁をシリンダーの中に組み込むわけですがピストンとの干渉を考慮しながら余裕が有れば肉付けしてピストンにギリギリ近づけてどのくらいクリアランスボリュームが確保出来るかです。
またもう一つの方法としてバルブそのものを変更することです。バルブ単体として内部に空間があるので、シリンダーバルブだけを扱っている企業様があるのでクリアランスボリュームデーターを比較しながら有効ならば取り替える方法も有ります。しかしながらこの場合、バルブの圧力損失に注力しなければなりません。損失が大きいとガス圧力は上昇するので圧縮比は大きくなり流量は減量の方向に向かいます。従って取替え前と後とのバルブ単体の持つクリアランスボリュームと圧力損失の両方をにらみながらの流量計算が必要です。この圧力損失、バルブの種類によっては比較的影響が大きいので気を付けなければなりません。
ところで、2段圧縮の場合、1段吸入圧力及び2段吐出圧力は変更無しで1段か2段かのどちらかだけ増量のシリンダー部品改造した場合、流量と中間段圧力はどのような傾向になるでしょうか? 1段シリンダー改造のみの場合、流量はUP、中間段圧力も上昇します。2段シリンダー改造のみの場合、流量はUP、中間段圧力は減少します。中間段圧力の上昇は安全弁吹き出し圧力及びアラーム、トリップの設定値に留意しなければなりません。