往復動圧縮機はピストンの繰り返し摺動による容積型圧縮機なのでシリンダーの中で間欠的にガスは圧縮/膨張されガス圧力は脈動します。この脈動現象、学問的には音響学に属しシリンダー内及び配管内ガス通過部の気柱振動現象です。この現象、イメージ的に非常に分かりにくいので見過ごしがちですが時に大きなトラブルを引き起こします。

ピストンによるガスの圧縮/膨張によりガスの気体中に間欠的に疎密波が発生し音波のように伝搬します。ガス通過路断面積の変化のたびに疎密波が反射し今来た疎密波と重なり合ったり相殺しあったりして複雑な脈動圧力を現出します。その時うまく波の位相があったりすると共振現象を起こしトラブルのもとになります。
ピストンの繰り返し動作によりガスはシリンダーの各吸入口及び吐出口に組み込まれたシリンダーバルブを通過して流れています。 シリンダーバルブの開閉動作はバルブ前後のガス圧力差により引き起こされますが通過時の圧力波形は横波で表現すればきれいな正弦波ではなく一種の矩形波で、分解すると圧縮機の回転数を第一次の基本周波数とするとその倍の第二次周波数、3倍の第三次周波数・・・という風に各次数の周波数を持つ正弦波の集合体となります。トラブル時の解決は、これら周波数のどの正弦波に着目すれば良いかという進め方をします。
脈動のトラブルと言えば大半は脈動の共振現象に起因していると言っても過言ではないでしょう。ひとたび脈動共振がが発生した場合のトラブルは厄介なものになります。共振現象は可能性から言えばどこにでも発生します。バルブ室で発生すればバルブプレート/スプリング系が異常動作を繰り返しプレートは損傷し、スプリングは破断します。この時脈動が原因だと結論付けるのは非常に難しく、解決法も困難を極めます。また配管側で発生した場合は配管レイアウトを変えるような大掛かりな工事が発生する事態になります。ここでガスの流れ方向と脈動波の伝搬方向は吸入サイドでは逆になるので勘違い無きよう願います。

ところでダブルアクティングのシリンダーの場合、100%のフルロードと50%のハーフロードとでは脈動圧力値(Peak to Peak)は一般的にハーフロード時の方が大きいのです。それはダブルアクティングの場合、フルロード時はトップとボトムの脈動波は180度位相がずれているということと正弦波次数が高いほど各次数の個別脈動値は低くなる(エネルギーは下がる)という現象を考えれば分かります。