往復動圧縮機はガスをシリンダー内で圧縮し圧力を上げて排出します。この時シリンダー内で起きている現象は低温/低圧力のガスが吸入されピストンで圧縮され高温/高圧力になって吐出されます。この動作をモーターやエンジンでもって一定の周期をもって連続的に繰り返すことで大量のガスを下流側へ送り出し続けます。
ここでシリンダー内で高温/高圧の負荷を常に受けている部品はガスの受け入れ/搬出を担うシリンダーバルブと圧縮されて高圧となったガスのシールを行うピストンリング及びロッドパッキンです。シリンダーバルブについては過去のブログでも何度か取り上げましたがバルブの基本的構成エレメントはシールを司るバルブプレート、プレートをサポートし且つ作動させるスプリング、それらを包括するケーシングから成り立っています。運転中常に作動するバルブプレートとスプリングは常時高温/高圧に晒され、さらに作動による衝撃力を受けるので損傷する頻度が高いです。スプリングには平板スプリング、波形スプリングそしてコイルスプリング等がありますが、最も多く利用されているのがコイルスプリングです。
コイルスプリングの損傷はコイルの断裂です。スプリングの伸縮によって発生するコイル内応力は時に想定外の値になる時があり、それはガス内の異物によるコイルの嚙み込みであったり、回転周波数とスプリング定数のマッチングによる異常伸縮がもとで発生する応力過多であったりします。コイルスプリングの損傷により発生する現象としてはガス圧力/温度の低下あるいは増加、ガス流量の低下、さらにガス流異常によるシリンダーの異常振動あるいは騒音の増加等です。
この時運転を停止しシリンダーを開放しシリンダーバルブを分解し損傷具合を調査します。損傷原因の多くはバルブプレートとバルブスプリングですがバルブスプリングの損傷はスプリングコイルの断裂であったりスプリング両端の摩耗、スプリング長さが短くなる”へたり”であったりします。スプリングの”へたり”はスプリング収縮時の過大応力の結果であり材料の塑性変形領域の応力を超えた状態で稼働を続けた結果であります。スプリング両端の摩耗はスプリングとバルブプレートあるいはスプリングとケーシングのスプリング穴底との接触摩擦の結果であり、それはガス流によるバルブプレートの振動あるいはスプリング自身の共振による”踊り”等による影響です。
応力不足によるコイルの断裂は断裂の形状によって原因となる応力状況がほぼ把握できます。
1,コイル軸線の直角な面で断裂
捩じられたコイルスプリングの伸縮時、コイル軸線に対し直角な面は主剪断応力が発生します。通常使用されるスプリングは鋼線ですが強度は主応力より主せん断応力が低いのでこの軸線に対する直角方向にせん断破壊します。(参照:写真ー1)
2,コイル軸線と45度傾く面で断裂
捩じられたスプリングコイルの主応力は軸線に対し45度方向に発生します。スプリングが鋳鉄の場合、強度は主応力は主せん断応力より低いので45度面で分離破壊しますが、鋼線の場合で繰り返し応力を受けその材料の疲れ限度を超えた使い方をすると同じ45度の面で疲れ破壊を生じます。(参照:写真ー2)。これはある一定以上の繰り返し応力が作用すると結晶内で微小なすべりが発生し徐々に塑性変形が生じ最終的に亀裂という 引張の分離破壊が生じるためです。
従ってコイルの軸線に対し90度の面で断裂している場合はスプリング材そのもののせん断強度の再検討。45度の面で断裂している場合は繰り返し強度の再確認を行うことが必要です。

写真ー1 写真ー2