シリンダーバルブは吸入弁と吐出弁があります。その機能はガスをシリンダーに取り入れるのが吸入弁で、シリンダーに入ったガスをピストンにて圧縮し、圧縮されたガスをシリンダーの外へ吐き出すのが吐出弁です。吸吐弁の部品構造は上下に円盤状のシートとガイドという二つのケーシングがありそれらケーシングを結合しているセンターボルトがあります。その中にエレメントとしてバルブプレートとバルブスプリングがあります。そして二つのエレメントの動作の補助的部品として、バルブプレートの作動の衝撃性を緩和するバッキングプレート、同じくスプリング荷重の衝撃性を緩和するスプリングボタン、その他細かなスクリューあるいはワッシャー等で成り立っています。
バルブの開閉の動作はシリンダー内ガスの圧力荷重(Pg)とスプリング荷重(Ps)の差により発生します。シリンダー内にガスを取り込む時の吸入弁の場合、ピストンの引きによりシリンダー内ガス圧が低下し吸入側(外側)の高いガス圧と圧力差が発生することにより生じたガスの圧力荷重(Pg)が吸入弁のスプリング荷重(Ps)より大きくなります(Pg>Ps)。この時吸入弁のスプリングは縮みバルブプレートがリフトアップし(弁が開く)ガスがシリンダー内に引き込まれます。 シリンダーの外へガスを吐き出す時の吐出弁の場合はピストンの押しによりシリンダー内ガス圧が上昇し吐出側(外側)の圧力より高くなった時圧力差が発生し、これにより生じたガスの圧力荷重(Pg)が吐出弁のスプリング荷重(Ps)より大きくなり(Pg>Ps)、吐出弁のスプリングは縮みバルブプレートがリフトアップし(弁が開く)ガスがシリンダー外に押し出されます。
スプリングの設計はスプリングの伸縮荷重をどのくらいにすればよいかの検討になります。スプリング荷重がガスの圧力荷重より強すぎるとスプリングの縮みが少なく、バルブプレートのリフトが小さくなり十分なガスの流れが得られません。逆に弱すぎるとバルブプレートのリフト時、バルブプレートがガイドというケーシングに衝突する衝撃力が大きくなりプレートの損傷に繋がります。(通常、損傷防止としてバルブプレートとガイドの間にバッキングプレートというもう一枚のプレートを常時、緩衝材として設けます)
スプリングの伸縮荷重が弱すぎた場合もう一つ困った問題が起きます。それが閉じ遅れという現象です。
吸入弁
ピストンが引き行程になりガスがシリンダー内に入りますがこの行程の最終時、バルブ前後のガス圧力が均衡し吸入弁のバルブプレートは閉じます。この閉じる力はバルブスプリングのスプリング力で閉じるのですが、この力が弱いと十分に閉じきれない場合が生じます。その後ピストンは押し行程に入りシリンダー内ガスの圧力が急激に上昇します。この時吸入弁のバルブプレートは背後からシリンダー内ガス圧を受け急激にリフトし閉じます。そしてケーシングのシートに衝突しその衝撃力で相当の負荷を受けプレートの損傷に繋がります。
この場合、シリンダー内ガスが僅かに逆流するのですから上流側への漏れという現象になり流量低下、さらに次の吸入行程で少々温度が上がった同じガスを再度圧縮することになり、いわゆる再圧縮による温度上昇が発生します。
吐出弁
吐出弁の場合はピストンの押し行程の最終で発生します。最終時バルブ前後のガス圧力が均衡し吐出弁のバルブプレートが閉じる時、バルブスプリングのスプリング力が弱いため完全に閉じきれないと、続く吸入行程時シリンダー内ガスの圧力が急激に下がるとバルブプレートは背後から下流側の高いガス圧力を受けプレートは急激に閉じてシートに衝突します。
この場合も、上流側へのガス漏れによる流量低下、そしてガス再圧縮による温度上昇に見舞われます。
閉じ遅れ現象はバルブスプリングのスプリング力が弱すぎる場合発生しますが、これに基づき起こる不具合はまとめると以下のようになります。
1,バルブプレートの損傷
2,流量低下
3,温度上昇
スプリングの選定は各メーカーさんのノウハウなので、スプリング力の適正荷重は各社異なります。