クロスヘッドピン/軸受のトラブル
往復動圧縮機駆動部のトラブルで頻度が高いのは、クロスヘッドピン/軸受けの焼き付きです。クロスヘッドとはピストンロッドとコネクティングロッドの両方の部品を繋いでいる部品でコネクティングロッドの回転運動をピストンロッドの往復運動に変換する重要な部品です。
コネクティングロッドは駆動機(主にモーター)からの回転動力を受けるクランクシャフトに接続されておりクランクシャフトのクランクピンとクロスヘッドのクロスヘッドピンに繋がっています。
クランクピン、クロスヘッドピンそれぞれ相手側に軸受けがありピンの荷重を受けています。ところがクロスヘッドピンの回転はクランクピンのように 360 度回転でなくほぼ 30 度程度の回転運動なので(これを揺動運動と呼びます)条件によってはピン/軸受け間に十分に潤滑油が行き渡らない場合があります。
ピン軸受けにかかる荷重はピストン、ピストンロッド、クロスヘッド等の往復動慣性力と取扱いガスのガスフォースがあります。それぞれが変動荷重でその合力が軸受けにかかります。
ピストンの圧縮がヘッドエンドとクランクエンドの交互に行なうダブルアクティングの場合、荷重方向が 180 度逆転するので交互に潤滑油が十分に供給され心配ないのですが圧縮がヘッドエンドだけあるいはクランクエンドだけという場合、ピンは軸受けの片側にピタッと張り付いて潤滑油が行き渡らない場合が生じます。
メーカー様はそのような厳しい条件下でも順調な運転を維持するノウハウを保持しております。
但し、ここで気を付けなければならないのは当初、機械がプラントに導入された時の運転条件がそのまま維持されていれば問題は生じないのですが、後年、製造計画の変更による圧力/温度条件の変更、ガス流量変更に伴うシリンダー径変更等の改造が生じた場合です。
運転圧力を上げる、シリンダー径を上げるという場合、荷重条件は厳しい方向に行くので細心の検討が必要です。
さらに見過ごされるのがシリンダー吸入弁/吐出弁の機種変更です。
機種変更によりシリンダー筒内のクリアランスボリュームと圧力はわずかに変化します。設計時のクリアランスボリュームと圧縮比(吐出圧力/吸入圧力)が変わり設計容量が変化し、この時の容量が増えるか減るかによってクロスヘッドピンの荷重条件が僅かに変わり、厳しい方向にいくのか、緩和される方向にいくのかということになります。もともと厳しい荷重条件で運転されていた場合、弁の変更によることでさらに厳しい条件に晒されるとピン/軸受に損傷トラブルが発生するということになるのでシリンダー吸入弁/吐出弁の機種変更時はバックチェックが必要です。